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2010年2月 9日 (火)

After Episode of "California in 1985"

今回の冬公演、California in 1985のエピローグになります。

もし良かったら、読んでみてください。
劇を観てないと、たぶん話が分からないと思います(´・ω・)

After Episode of "California in 1985"

――無事に自らの過去を殺し、ホテル・カリフォルニアを脱出できたリッチー。
愛車のコルベットの脇で、真夜中の太平洋を眺めている。
繰り返し、繰り返し、波の音がリフレインを奏でる。
ポケットからラークを取り出し、火をつけようとして……。
そうだ、ジッポはあのジジイに渡したんだった。
仕方が無いので、コルベットのシガーライターで火をつけた。
しばし、海を眺める。

海は黒く、広大だった。
昼間は蒼く広がる美しい海だが、今はそのような蒼さも、美しさもなかった。
俺の心にある感情、それは「畏怖」だった。
コルベットのエンジンを切り、海に向かって歩いた。
気温的には過ごしやすいが、海辺の空気は湿っており、じっとりと服が体にまとわりつく。
やがて舗装された道が終わり、目の前には砂浜が広がっていた。
俺は裸足になり、スラックスの裾を折る。
ゆっくりと、ビーチに歩みを進めた。
砂は心地よく冷たく、足をくすぐる感触が気持ちよかった。
ラークを大きく吸い込み、空に向かって吐き出す。
紫煙をおって視線が天を仰ぐ。
そこには全天の星があった。
あえてこの星を形容しない。
この星を、言葉で汚したくない。
――吸殻を、携帯灰皿に捨てた。

その時、遠くで花火が上がった。
かろうじて、音だけ聞くことができた。
……独立記念日か。
合衆国も新世紀になるわけだ。
冷たい夜風が、気持ちよかった。
潮の香りが、新鮮だった。
頭上には、満点の星があった。
そして鞄から、ベレッタを取り出した。
海から視線をそらし、ホテルに向き直った。
夜の闇の中にそびえるホテルは真っ黒で、あたかも墓石のようであった。
ホテルに向かって銃を構えるも、引き金は引けなかった。
そのまま銃を下ろす。
――無性に、タバコを吸いたかった。

ホテル・カリフォルニアはクライマックスに差し掛かる。
ドン・ヘンリーのヴォーカルパートが終わり、ドン・フェルダーとジョー・ウォルシュのツインのギターリフが始まる。
そのメロディーにあわせて、ジミのセリフが聞こえてきた。
「どうぞ、安らかに」
その後に、一発の銃声――。

「あんた、やるじゃねぇか」
ホテルを見上げながら、思わず声に出してしまった。
その瞬間、空が、風が、海が、敵になったような気がした。
海に背を向け、車に戻った。
――きっともう、自分はここにいちゃいけないんだ。

駐車場に帰ると、ジミがタバコを吸っていた。
俺は黙ってジミに近づき、ラークをくわえた。
あいつは無言で火を貸してくれた。
二人で、海を見た。
ずっと、無言だった。
きっとこの地は言葉を嫌うんだ――少なくとも今は。
そんな気がした。

やがて、ジミは俺に手をふり、自分のメルセデスに乗った。
俺もコルベットに向かって歩いた。
二人とも、最後までホテルを見なかった。
車に乗り込む瞬間、急に強い風が吹いた。
海に向かう、風だった。
――さようなら。
心のなかでつぶやいた。
海に向かって。
車に乗り込み、エンジンをかける。
俺の前を、メルセデスが走っていく。
俺もそれに続いて、ロスに向かうハイウェイにのった。

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